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文学部出身の私が若い頃に読んで衝撃を受けたおすすめ小説10選

若い頃小説を読むのが好きで、いろんな作家さんの本を読んでいました。
その読書体験の中でも特に衝撃を受けた小説を10冊ピックアップしてご紹介します。
問答無用の超絶おすすめ本です!!
※シリーズであげてたりもするので実際は10冊以上になってます。。

1. 新しい人よ眼ざめよ - 大江健三郎

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障害を持つ長男「イーヨー」との共生を描いたいわゆる私小説です。

大江健三郎の小説には時折神秘的な知的障害を持つ人物が登場しますが、それが完全なフィクションではなく、実際に長男の光さんは知的障害者であることがわかります。

その長男との生活は決して楽なものではなく、時には苦痛をともなった出来事も多く語られます。本来なら隠したくなるような出来事(例えば息子の性欲について)も真っ正直に描写し続けます。

そんな生活のなかで、登場人物である私(=大江)は詩人ウィリアム・ブレイクの詩を読みとくことで「救い」を求めてひたすら考察を続けていきます。

20歳でまだ子どももいない時に読みましたが、作者の生きることに対する率直な姿勢と、その際の苦悩に対して自らの職業でもある作家としての視点で考察し、読み解いていきそれが救済のレベルにまで昇華される様にただただ圧倒されたのを覚えています。

新しい人よ眼ざめよ (講談社文庫)

新しい人よ眼ざめよ (講談社文庫)

2. 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド - 村上春樹

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村上春樹の作品は高校生の頃から読み続けていますが、その中で最もおすすめはこちらです。

独特な世界だけど異なる2つの話が同時並行に進められていきます。
最初は関連なんてなさそうな話が、進むにつれてつながりを見せていきます。

ストーリーの完成度もさることながら、その独特の世界観が大好きな作品です。
特に「世界の終わり」の方の静寂な舞台にひたりきってしまう人も多いのではないでしょうか。

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 全2巻 完結セット (新潮文庫)

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 全2巻 完結セット (新潮文庫)

3. 五分後の世界 - 村上龍

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第二次世界大戦での日本が「もしも〇〇だったら」の世界を描いた小説。

読んだ当時(高校生)、学校で習う歴史認識と価値観が正しいと思い込んでいた私にとって、まさに目からウロコの衝撃作品でした。

かっこいい日本がここにある!!
(まあ、いろいろ議論の余地はありましょうが)

五分後の世界 (幻冬舎文庫)

五分後の世界 (幻冬舎文庫)

4. 枯木灘 - 中上健次

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紀州・熊野を舞台とした、血縁と土地に縛られた血なまぐさい暴力と憎悪、そして愛の物語。
著者が織りなす紀州サーガの代表的はじまりの作品。

都市に住む現代的な生活とはまったく正反対の世界が広がっています。
忘れられてはいけない作品。

枯木灘 (河出文庫 102A)

枯木灘 (河出文庫 102A)

5. 七瀬シリーズ(家族八景・七瀬ふたたび・エディプスの恋人) - 筒井康隆

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なぜか生まれつき人の心が読めてしまう美貌の主人公「七瀬」。
そんな七瀬が活躍する超絶面白いシリーズ3部作です。

これ、本当に夢中になって読みました。
3部作ですが、一つひとつ違った色合いを出していて飽きません!!

家族八景

幸か不幸か生まれながらのテレパシーをもって、目の前の人の心をすべて読みとってしまう可愛いお手伝いさんの七瀬――彼女は転々として移り住む八軒の住人の心にふと忍び寄ってマイホームの虚偽を抉り出す。人間心理の深層に容赦なく光を当て、平凡な日常生活を営む小市民の猥雑な心の裏面を、コミカルな筆致で、ペーソスにまで昇華させた、恐ろしくも哀しい本である。

家族八景 (新潮文庫)

家族八景 (新潮文庫)

七瀬ふたたび

生れながらに人の心を読むことができる超能力者、美しきテレパス火田七瀬は、人に超能力者だと悟られるのを恐れて、お手伝いの仕事をやめ、旅に出る。その夜汽車の中で、生れてはじめて、同じテレパシーの能力を持った子供ノリオと出会う。その後、次々と異なる超能力の持主とめぐり会った七瀬は、彼らと共に、超能力者を抹殺しようとたくらむ暗黒組織と、血みどろの死闘を展開する。

七瀬ふたたび (新潮文庫)

七瀬ふたたび (新潮文庫)

エディプスの恋人

ある日、少年の頭上でボールが割れた。強い“意志"の力に守られた少年の謎を探るうち、テレパス七瀬は、いつしか少年を愛していた。

エディプスの恋人 (新潮文庫)

エディプスの恋人 (新潮文庫)

6. 孤島の鬼 - 江戸川乱歩

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ご存知の方も多いし、よく江戸川乱歩の名作として言及される作品ですが、やっぱり挙げてみました。
読みだすと止まらない恐怖体験が待っています。

孤島の鬼

孤島の鬼

<おまけ>
乱歩好きな方にはこちらもおすすめします。
久世光彦がある時期の乱歩に焦点をあてて描いた、まさに乱歩好きのためにあるのような作品です。
未読の方は読んで損なし!!!

一九三四年冬―乱歩 (創元推理文庫)

一九三四年冬―乱歩 (創元推理文庫)

7. 高校生のためのシリーズ - 梅田 卓夫/清水 良典 他

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「高校生のための」なんてタイトルにあるけど、侮るなかれ!!
パラパラっとめくるとなんか教科書っぽくて退屈なんでは?なんて思うかもしれないけど、侮るなかれ!!!

もうこれ持ってたら他の本はいらないかもしれない、と思えてしまうくらい滋味深い小説の美味しいところ取り&人生に勇気を与える素晴らしい解説がセットになっています。

読んでないと人生勿体なさすぎます!!

それなのに元の3冊中、下記の2冊しか文庫化されていません。。
残念すぎる〜〜。

高校生のための文章読本 (ちくま学芸文庫)

高校生のための文章読本 (ちくま学芸文庫)

高校生のための批評入門 (ちくま学芸文庫)

高校生のための批評入門 (ちくま学芸文庫)

↓初期の上製本版(絶版状態か?)
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高校生のための文章読本

高校生のための文章読本

高校生のための批評入門

高校生のための批評入門

高校生のための小説案内

高校生のための小説案内

8. キャッチャー・イン・ザ・ライ - J.D.サリンジャー

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読んだのは、村上春樹訳です。
そう、村上春樹つながりで。。

この小説は、一種独特な語り口調がリズムよく並べられ、それが主人公の性格や発言とうまく同調し(ある種若さならではの)不満や不安感がビシビシ伝わってくる作品です。
妙な中毒性のある文体かと感じました(訳が相当うまいんだと思います)。

ともあれ、若い時にしか得られないような感覚を共有、または思い出させてくれる貴重な小説です。

キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション)

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9. グレート・ギャツビー - スコット フィッツジェラルド

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これも春樹つながりで。。

映画化もされているので本読むの面倒だなって人は映像から入るといいかも。

謎の大富豪ギャツビーの生き方に震えます。
美しくも儚い物語。

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

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  • 作者: スコットフィッツジェラルド,Francis Scott Fitzgerald,村上春樹
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10. カラマーゾフの兄弟 - ドストエフスキー

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大長編だけど小説の王様とも言われている作品。

個人的にはミステリーとして読めるところが気に入っています。

今でも関連本や謎解きがされているくらい面白い!!

カラマーゾフの兄弟 全4巻セット (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟 全4巻セット (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの妹 (講談社文庫)

カラマーゾフの妹 (講談社文庫)

新カラマーゾフの兄弟 上(上・下2巻)

新カラマーゾフの兄弟 上(上・下2巻)

偉大な罪人の生涯――続カラマーゾフの兄弟

偉大な罪人の生涯――続カラマーゾフの兄弟

最後に

良い本の基準の一つには、"いろいろな読み方ができる"ということがあると思います。

今回紹介した本も読む年齢に関係なく時代を超越した作品ばかりですので、ぜひ書店などで見かけたら手にとってみてください。

あと、これを読んで、いやいや他にこんな良い本あるよ!とか思った方はぜひその本を教えてください。

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