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正しいメガネのずらし方

やくにたちそうでたたない

父の思い出(あるいは家族とのうまい折り合いかた)

思い出すこと

※父はまだ生きてます。念のため。

父で思い出すのはまず酒だ。

そう、父は毎日家で酒を飲んでいた。
一緒に住んでいた頃、父と接している時間のほとんどは酔っ払っていた状態だった。
そんなわけだから話をしていてもイマイチ会話が噛み合わないし、変に気が大きくなっているから、やれ、たらば蟹を食わしてやるだの、今度シャトーブリアンっていううまい肉を食わしてやるだの、結局果たされない約束を一方的にしてくることが多々あった。
(後でその約束のことを聞くとしらばっくれる)

こっちは当時、繊細な10代だったわけだから、適当なことばかり酒の力に頼って言ってくる父にそれなりに幻滅して、父に対してそもそも何の期待も抱かないようになった。

父は家でいつも酔っ払って、ある時は夜中にトイレと間違えてベランダから用を足そうとして、母に注意されていたのも目撃した。
自分が幼い頃なんかは父に水だと騙されて焼酎を飲まされそうになったりした(実際少し飲んだ)。
当時は冗談で済んだのかもしれないが今そんなことしたりされたりしたら結構な問題だろう。

母はそんな父だから酒を飲めないよう隠したりしていたが、父は逆上して怒って酒を探したりしていた。
暴力こそ振るったところは見たことはなかったが、一度だけ母に対してビールを飲むような大きなガラスコップを投げつけているのを目にして、腹が立って睨みつけたことがあった。

今だって聞いた話では、外で酒を飲んで飲みすぎて兄がしょうがなく迎えに行ったりすることも多々あるらしい。

...とまあ、こんなことばかり書いていたら当の父は怒るだろうな。

そうそう、父で思い出す、一つ印象的な出来事があった。

大学受験で関西に泊りがけで受験に行く時、あまりに田舎者だった自分に父が付き添ってついてきてくれていた(本当に新幹線や電車の乗りかたがわからなかった)。

新幹線から降りた後か乗る前だったのかは思えていないけど、駅のホームを歩いている時に足が不自由でおぼつかない感じの男性がちょうど新幹線に乗ろうとしていた。
ちょっと離れたところを父と歩いていたんだけど、なんか危なっかしいな〜と自分はつい見入っていたところ、あれよあれよといううちにホームと新幹線の間の隙間に、するっと落ちたのである(そんな狭い隙間にっ)!!

自分はまさに「あっ」と驚いていると、父は考えるより速くさっと駆け寄って男性の脇をさっさとつかんで引っ張りあげてしまった。そして新幹線に乗っけて何もなかったかのようにこちらに引き返して戻ってきた。

正直、あまりの行動の速さと迷いのなさにあっけにとられてしまった。
いつもはぐでんぐでんに酔っ払っている父からは想像もできない行動力とそれを自然体で実行している姿に、それ以来少し違った目で父を見るようにもなった。

その時自分は何もできなかったけど、また同じ状況に遭遇したら父同様の行動ができるだろうかとか、そういう大人になりたい、とかまあ青臭いことを当時は思ったものである。

自分が小さい頃から、酒飲んでばかりでだらしない姿の時が多かった父だけど、そんな意外な思い出もあるから多少酔っ払っていても、今となっては笑って見過ごしてしまうのだ。
(でも、もう結構なトシだから少しは控えて欲しくはあるのだが)

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